次世代ビルドツール「Vite」の特徴と技術選定のポイント


こんにちは!エンジニアの能戸 成琉です。ご覧いただきありがとうございます!
実案件でViteが選定候補に上がり、詳しく調査する機会がありました。本記事では、実際に検証を行いながら分かったViteの機能や優位性についてまとめています。
これからViteを検討される方の参考になれば幸いです!
Viteの概要と設計思想

Viteとは何か?
Vite(読み方:「ヴィート」)は、フランス語で「速い」を意味するモダンなWebビルドツールです。従来のビルドツールよりも高速で効率的な開発環境を提供することを目的として設計されています。
筆者も実際に案件で使ってみて、かなり早いと感じました。
Viteの哲学
Viteの設計思想を4つのポイントで解説します。
1. 軽量コア + プラグイン拡張
Viteは「すべての機能をコアに詰め込まない」という明確な方針を持っています。基本的なWebアプリ構築に必要な機能のみをコアに含め、その他の機能は豊富なプラグインエコシステムで提供します。これにより長期的なメンテナンス性と軽量性を両立しています。
2. モダンWeb技術の積極採用
ESMネイティブサポート、新しいWebWorker構文の推奨など、Viteは常に最新のWeb標準を採用しています。古い技術との互換性よりも、将来性のあるモダンな開発体験を優先する設計思想です。
3. 現実的なパフォーマンス戦略
重要なタスクにはesbuildやSWCなどの超高速ネイティブツールを使用し、柔軟性が必要な部分はJavaScriptで実装。「すべてを最速にする」のではなく、「全体として最適なパフォーマンス」を目指すアプローチです。
4. フレームワーク構築プラットフォーム
Vite単体での使用も可能ですが、真の価値はフレームワーク作成者向けのツールとしての機能にあります。JavaScript APIやSSRプリミティブにより、各フレームワークが独自の開発体験を構築できる基盤を提供しています。
公式ドキュメントにも全文がまとめられているので気になる方はご覧ください。
Viteのトレンド・特徴
GitHubのスター数
.png)
Githubのスター数の傾向を見ると、Viteは2020年以降急速に人気が高まり、2022年にはwebpackのスター数を逆転しました。2024年にかけてその差はさらに広がっており、Viteが次世代ビルドツールの主役として今後もますます注目されることが期待されます。
5つの特徴
1. 開発サーバーとHMRの圧倒的な高速性
Viteの最大の特徴は、開発サーバーの起動とホットリロードの圧倒的な速さです。従来のWebpackなどのツールでは、プロジェクトが大きくなるにつれて開発サーバーの起動に数分かかることも珍しくありませんでしたが、Viteでは数秒で起動が完了します。さらに注目すべきは、コードを変更した際のブラウザへの反映速度で、50ms未満という驚異的な速度でHMRを実現しており、コードを保存するとほぼ瞬時にブラウザに変更が反映されます。
2. TypeScriptの優れた統合とゼロ設定サポート
TypeScriptの統合においても、Viteは他のツールを大きく上回る体験を提供します。最も印象的なのは、複雑な設定ファイルを書くことなく、TypeScriptファイルをそのままインポートして使用できることです。
*// Vite - 設定不要でTypeScriptが動作*
import { UserService } from './services/user.ts'
import { ApiClient } from './api/client.ts'
*// Webpack - 複雑な設定が必要*
module.exports = {
module: {
rules: [
{
test: /\\.tsx?$/,
use: 'ts-loader',
exclude: /node_modules/,
},
],
},
resolve: {
extensions: ['.tsx', '.ts', '.js'],
},
}
内部的にはesbuildという超高速なトランスパイラーを使用しており、従来のTypeScriptコンパイラーと比較して20から30倍の速度でTypeScriptからJavaScriptへの変換を行います。
3. 依存関係の自動事前バンドリング機能
外部ライブラリの処理において、Viteは独自の事前バンドリング機能を提供しています。例えばlodashのような大きなライブラリから特定の関数のみをインポートする場合、従来のツールでは複数のファイルを個別に取得する必要がありましたが、Viteは必要な部分を事前に1つのファイルにまとめて最適化します。
*// 開発者が書くコード*
import { debounce, throttle } from 'lodash'
import { format } from 'date-fns'
*// Viteが自動で最適化// ↓ 内部的に以下のように変換される*
import { debounce, throttle } from '/node_modules/.vite/deps/lodash.js?v=abc123'
import { format } from '/node_modules/.vite/deps/date-fns.js?v=def456'
この処理は開発者が意識することなく自動的に行われ、初回のページ読み込み速度を大幅に向上させます。
4. ビルド設定の圧倒的な簡潔性
設定の簡潔性は、Viteの大きな魅力の一つです。Webpackで同等の機能を実現しようとすると数十行から数百行の設定ファイルが必要になりますが、Viteでは最小限の設定、開発環境を構築できます。
*// Vite設定 - 最小限で全機能が動作*
export default {
*// TypeScript、CSS、JSXなどが設定なしで動作*
}
*// Webpack設定 - 同等機能に大量の設定が必要*
module.exports = {
entry: './src/index.js',
module: {
rules: [
{ test: /\\.(js|jsx)$/, use: ['babel-loader'] },
{ test: /\\.css$/, use: ['style-loader', 'css-loader'] },
{ test: /\\.scss$/, use: ['style-loader', 'css-loader', 'sass-loader'] }
]
},
plugins: [new HtmlWebpackPlugin(), new MiniCssExtractPlugin()],
*// ...etc*
}
CSS、TypeScript、JSXなどの一般的な技術スタックは設定なしで動作し、必要に応じて後から設定を追加することも可能です。
5. 充実したプラグインエコシステムと高い互換性
Viteのプラグインシステムは、既存のRollupプラグインとの互換性を持っており、豊富なエコシステムをそのまま活用できます。ReactやVueなどの主要フレームワークには公式プラグインが提供されており、これらは1行の設定を追加するだけで利用可能です。
*// vite.config.js*
import react from '@vitejs/plugin-react'
import vue from '@vitejs/plugin-vue'
export default {
plugins: [react(), vue()] *// 1行で完全サポート*
}
この互換性により、Vite専用のプラグインを待つ必要がなく、既存のJavaScriptエコシステムの恩恵をすぐに受けることができます。
これらの主要な特徴に加えて、ViteにはCSS modules、WebAssembly対応、Web Workers統合など、モダンな開発に必要な機能が豊富に用意されています。詳細については公式ドキュメントをご覧ください。
ユースケース・技術選定基準
Viteが適しているケース
1.SPAアプリケーション開発(小〜中規模プロジェクト)
React、Vue、Svelte、SolidJSなどのモダンフレームワークを使用するSPA開発において、Viteは最高の開発体験を提供します。社内ツールや管理画面、ダッシュボードなどの小〜中規模プロジェクトで特に威力を発揮します。TypeScript環境や高速な開発サーバー起動、リアルタイムなHMRにより、ストレスフリーな開発が可能です。
2.軽量なSSRアプリケーション
RemixやReact Router v6.4+との組み合わせなど、シンプルなSSR要件の場合はViteが適しています。Next.js/Nuxt.jsほどの機能は不要で、カスタム性を重視したいプロジェクトや、複雑なサーバーロジックが不要なケースでは、Viteの軽量さが活かされます。
3.パッケージ・ライブラリ開発
npm公開を前提としたJavaScriptライブラリやReactコンポーネントライブラリの開発にViteは最適です。ライブラリモードにより複数の出力形式(ES modules、CommonJS、UMD)を簡単に生成でき、TypeScriptの型定義ファイルも自動生成されます。Tree Shaking最適化と軽量なビルド出力により、効率的なパッケージを作成できます。
Viteが適していないケース
1.複雑なSSR要件
SEOが最重要のコーポレートサイトやメディアサイトなど、検索エンジン最適化が事業に直結する場合は、Next.jsやNuxt.jsの方が適しています。複雑な認証・認可システムやリアルタイム性が重要なアプリケーションなど、高度なサーバーサイド処理が必要な場合も同様に選択肢として避けた方がいいでしょう。
2.レガシー環境への対応が必要
Internet Explorer 11以下のサポートが必須の場合や、CommonJS形式のライブラリに強く依存するシステムでは、Viteの採用は困難です。企業の社内システムで古いブラウザを利用している環境や、既存のレガシーなビルドパイプラインとの統合が必要な場合は避けた方が良いでしょう。
3.大規模・エンタープライズ開発
Viteだけに該当する訳ではないですが、20人以上の大規模チーム開発や、複数チーム間での技術標準化が重要な環境では、より成熟したエコシステムが必要です。10年以上の長期運用が予定されており、安定性・保守性を最重視するシステムでは、実績のあるツールチェーンの方が適しています。
おわり
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、次世代ビルドツールと呼ばれる「Vite」について、提供されている機能や適用ケースを調査した結果をまとめました!
Vite は、ビルドのパフォーマンスと機能を向上させるために、Rust ベースの JavaScript バンドラーであるRolldownを統合する予定であり、さらなるパフォーマンス向上が期待できそうです👀
この記事が参考になった/良かったと思っていただけたら、以下のボタンからシェアしていただけると嬉しいです。筆者の励みになり、今後の改善にもつながりますので、よろしくお願いします🚀
記事を書いた人

能戸 成琉
Software Engineer
ベンチャー企業でフルスタックエンジニアをしながら、フリーランスとしてWebアプリケーションの開発・運用支援や技術記事の執筆を行っております。